酒類販売業免許には、他の許認可にはない大きな特徴があります。
 それは 「名義変更ができない」 という点です。
 そのため、事業を引き継ぐ際には、一般的な事業承継とは異なる独自のルールや注意点が数多く存在します。
 行政書士として実務で特に重要なポイントを整理してお伝えします。

1. 法人成りの落とし穴
 個人事業主が法人化する際、
 「代表者は同じなのだから免許もそのまま使えるはず」
と誤解されるケースが非常に多いです。
 しかし、法律上個人と法人はまったくの別人格。
 そのため、原則として法人として新規免許の取得が必要になります
 ただし、事業が止まらないようにするための承継制度があり、
 一定の要件を満たすことで、スムーズに免許を引き継ぐことが可能です。
 実務では、この「要件の確認」と「手続きの順番」が非常に重要になります。

2. 相続は“遅滞なく”がポイント
 相続による承継は、親族が引き継ぐ場合に限り、新規免許が不要です。
 ただし、ここで注意すべきは 「遅滞なく」申告すること
 法律上は曖昧な表現ですが、実務では
 数日〜2週間程度が目安とされています。
 この期間を過ぎると、承継が認められないリスクもあるため、早めの対応が欠かせません。

3. 生前承継(事業譲渡)は“全部譲渡”が必須
 生前承継の場合、
 事業の全部を譲渡することが承継の大前提です。
 ▢ 店舗
 ▢ 在庫
 ▢ 設備
 ▢ 営業権
 ▢ 取引関係
 これらをまとめて引き継ぐ必要があり、
 「店舗の一部だけ」「在庫だけ」などの部分譲渡では承継扱いになりません。
 この点は、相談者の方が誤解しやすいポイントのひとつです。

4. ゾンビ免許は宝の山だがリスクも大きい
 1989年以前の旧免許、いわゆるゾンビ免許は、
 大手メーカーの酒類も通販で扱える非常に強力な免許です。
 しかし、実務では次のようなリスクがつきまといます。
 ▢ 市場にほとんど出てこない
 ▢ 免許以外の負債も引き継ぐ可能性
 ▢ ネット販売実績がないと制限が付く
 特に「ネット販売実績」は見落とされがちで、
 実績がないまま承継すると、
 通販ができない免許に変更されてしまうこともあります。
 ゾンビ免許の承継は、慎重な調査と事前の税務署調整が不可欠です。

5. 行政書士としての実務ポイント
 酒類販売業免許の承継は、一般の方が想像する以上に複雑です。
 実務では次の点が特に重要になります。
 ✅ 税務署との事前調整が最重要
 ✅ 承継と取消申請は同時に行う
 ✅ 審査期間は2〜4か月が一般的
 ✅ 書類は膨大なので早めの準備が必要
 承継の種類によって必要書類も手続きの流れも大きく変わるため、
 「自分のケースはどれに当てはまるのか」を最初に正確に判断することが成功の鍵になります。

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