建設業の事業承継やM&Aでは、一般企業とは異なる独自のチェックポイントが存在します。特に 許認可・技術者・経営事項審査(経審)・工事進行基準 の4つは、会社の価値や承継後の運営に直結する重要要素です。本記事では、建設業の承継を検討する際に押さえておきたい実務ポイントを、行政書士の視点から整理します。
1. 許認可の確認は最優先事項
建設業許可は 法人格が変わると承継できないため、事業承継の成否に直結します。
確認すべき主な項目は次のとおりです。
▢ 許可区分(一般・特定)と許可業種
▢ 更新期限、決算変更届・変更届の提出状況
▢ 経営業務管理責任者(経管)の要件
▢ 専任技術者(専技)の資格・常勤性
▢ 社会保険加入状況(未加入は重大リスク)
2020年の法改正で経管要件は緩和されましたが、承継後に要件を満たせるかどうかは必ず確認が必要です。
また、建設業者の多くが取得している 産業廃棄物収集運搬許可も法人格変更で承継できません。
車両登録、積替保管の有無、マニフェスト管理など、行政処分につながりやすいポイントも要注意です。
2. 財務面では「工事進行基準」が最大の焦点
建設業の財務は一般企業と比べて特殊性が強く、特に 工事進行基準の妥当性が重要です。
▢ 工事原価の計上方法
▢ 進捗率の算定方法(出来高・原価比例)
▢ 未成工事支出金・受入金の整合性
▢ 完成工事高の計上タイミング
進行基準の誤りは、利益の過大・過少計上につながり、承継後のトラブルの典型例です。
また、架空外注費や原価付け替えなど、粉飾リスクの有無も慎重に確認する必要があります。
- 税務面では外注費・消費税・固定資産に注意
建設業では、外注費と給与の区分が曖昧になりやすく、源泉徴収漏れが発生しがちです。
また、簡易課税の誤適用や、工事進行基準の税務処理など、建設業特有の論点が多く存在します。
- 人事・労務は“技術者の確保”が会社価値を左右する
建設業の価値は 人材=技術者 に大きく依存します。
▢ 専任技術者・主任技術者の資格と常勤性
▢ 配置技術者の実績
▢ 技術者の年齢構成(高齢化リスク)
▢ 外国人技能実習生・特定技能の管理
▢ 労務管理(36協定、残業時間、社会保険加入)
特に、承継後に技術者が離職すると許可維持が困難になるため、離職リスクの把握は欠かせません。 - 事業面では「地域性」と「元請/下請構造」が重要
建設業は地域密着型のため、事業の安定性は地域の競争環境や取引先構造に左右されます。
▢ 元請比率・下請比率
▢ 公共工事の割合
▢ 主要取引先の依存度
▢ 契約書・施工管理書類の整備状況
▢ 経審の点数と入札参加資格
公共工事が多い会社では、経審の点数=会社の価値 といっても過言ではありません。
行政書士が特に力を発揮できる領域
▢ 建設業許可・産廃許可の要件確認
▢ 経管・専技の資格・常勤性チェック
▢ 決算変更届・事業年度終了報告書の整備
▢ 名義貸しの疑いの有無
▢ 経審の点数分析(推移・改善余地)
建設業の承継では、許認可・技術者・経審の3つが事業価値の根幹であり、行政書士の専門領域と完全に一致します。