経営ビザは現在、日本での事業所の開設に加え、「500万円以上の資本金を準備」もしくは「2人以上の常勤職員を雇用」のいずれかを満たす基準を設けていた。期間は最長5年である。経営ビザでの在留者は2024年におよそ約4万人と5年前に比べて1.5倍に増加した。
 日本政府は、外国人の起業を対象とした「経営・管理」在留資格について、2025年10月から新しい基準を導入する予定です。改正のポイントは以下の通りです。

(1)主な改定内容

  • 資本金要件の大幅引き上げ:従来の500万円から原則3,000万円以上に。
  • 雇用条件の強化:日本人または就労制限のない在留資格者を常勤で最低1名雇用することを義務化。
  • 経営者の適格性要件:申請者には「3年以上の経営・管理経験」または「修士号以上の学歴」が必要。
  • 事業計画の専門家確認:公認会計士や中小企業診断士による事業計画書のチェックが原則必須に。
  • 日本語能力要件の導入検討:申請者または常勤職員のいずれかが、日本語能力試験N2相当(国際基準B2レベル)を満たすことを求める方向で調整中。

    <参照 各国の在留資格「経営・管理」の資本金額基準>
アメリカ1500~3000万円
イギリス900万円程度
オーストラリア2000~4000万円
シンガポール約1100万円
韓国3200万円

(2)改正の背景

 経営・管理ビザは、法律上、申請者の学歴・職歴・年齢に制限がなく、比較的取得しやすい制度とされています。特に日本では、他国と比べて申請要件が緩やかであることから、実際の事業運営を伴わない申請や、移住を主目的とするケースが増えているとの指摘もあります。
 近年では、日本での生活を希望する外国人を対象に、ビザ取得を支援する仲介業者の存在も報告されており、制度の趣旨とは異なる利用が懸念されています。
こうした背景を踏まえ、今後は「日本で本格的に事業を展開したい」という意志と準備のある外国人起業家を適切に見極めるため、審査の内容がより実質的・総合的なものへと見直される方向にあります。

(3)想定される課題

  • 資本金3,000万円や雇用義務は小規模事業者や若手起業家には高いハードル。
  • 飲食、小売、IT、個人貿易など少額資本で始めやすい分野が排除される懸念。
  • 地域密着型ビジネスや社会的意義のあるスタートアップが制度から外れる可能性。

(4)今後の方向性

 資金力だけにとらわれず、事業の継続性や社会的な意義といった多面的な視点から評価できる仕組みの検討が求められています。これにより、地域に根ざした小規模な取り組みや、社会に新たな価値をもたらす事業にも光が当たるような制度設計が目指されます。

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