(1)来日前に発生する高額な費用負担
多くの技能実習生は、来日前に母国で仲介料や手数料などの費用を支払っており、特にベトナムからの実習生の多くが借金を抱えた状態で来日しています。
支払額は平均で50万〜65万円以上にのぼり、派遣手数料、日本語教育費、保証金などが含まれます。
仲介業者や送出し機関が、実習生本人と受入れ企業の双方から費用を徴収する「二重取り」の構造が問題視されています。
(2)返済の現実と生活の厳しさ
「日本で働けばすぐに返済できる」と説明されることが多いものの、実際の月収は14万〜15万円程度であり、税金や保険料、寮費などの控除後に残る手取りは限られています。そこから生活費や仕送りを差し引くと、借金返済が困難になるケースも少なくありません。そのため、休日出勤や長時間労働を希望する実習生も多く、過労や健康問題に陥るリスクが高まっています。
(3)失踪の背景にある制度的な制約
実習制度では、原則として雇用先の変更が認められていないため、劣悪な労働環境でも辞めることができず、精神的・経済的に追い詰められる実習生が少なくありません。借金の返済が滞ることで失踪に至るケースも多く、一部では犯罪に巻き込まれる危険性も指摘されています。
⚠️制度の課題と国際的な視点
国際労働機関(ILO)は、仲介料の二重徴収を「搾取」として批判しており、日本政府も制度の見直しと規制強化に取り組んでいます。技能実習制度が本来の「人材育成」よりも「労働力確保」に偏っているとの指摘もあり、2027年度には新たな「育成就労制度」への移行が予定されています。
⊂行政書士としての提言⊃
政府は、送出し機関の認証制度の導入や費用の上限設定などを進めており、受入れ企業や監理団体には、来日前の情報提供や生活支援の充実が求められています。また、地方自治体や民間団体による相談窓口の設置や、緊急時の支援体制の整備も重要な役割を果たしています。