外国人が日本で技能・技術・知識を学び、母国の産業発展に役立てることを目的とした「技能実習制度」。本記事では、その概要や移行方法、今後の動向まで、わかりやすく解説します。

(1)「技能実習」とは?概要と要件

 技能実習制度は、主に発展途上国の人材が日本で技能や知識を習得し、自国の経済発展に役立てることを目的とした制度です。労働力確保のための制度ではありませんが、実際には人手不足の業界で多くの外国人が働いているのが現状です。
【対象】発展途上国の外国人が日本で技術や知識を習得することを目的としています。
【在留期間】最長5年間
 技能実習1号:1年間(日本語や基礎技能の習得)
 技能実習2号:2年間(最長3年、実践的な技能の習得)
 技能実習3号:2年間(優良な実習実施者・監理団体のみ可能)
【就労可能職種】
 法務省告示で定められる91職種・168作業(2025年4月現在)に限られます。
【主な業種例】
 ・建設(型枠施工、鉄筋、塗装、内装)
 ・製造(機械加工、鋳造、プラスチック成形)
 ・食品製造(パン製造、漬物、食肉加工)
 ・繊維・衣服(染色、縫製)
 ・農業(耕種、畜産)
【技能実習の特徴とルール】
 ・技能の「習得」が目的。労働力確保ではない。
 ・受入企業が技能実習計画を作成し、認定を受ける。
 ・監理団体(組合等)が企業・実習生を支援。
 ・労働関係法令の適用対象(最低賃金、労災、社会保険加入が義務)。
 ※大企業や海外に現地法人がある企業は、監理団体を通さず直接受け入れることも可能ですが、一般的には監理団体を介した受入が主流です。

(2) 技能実習1号→2号、2号→3号への移行

 次のステップに進むには、在留資格変更許可申請が必要です。さらに以下の条件を満たす必要があります。
【移行条件】
 ・技能検定に合格していること
 ・計画通りの適正な実習修了
 ・不正行為がないこと
 ・技能実習計画の認定(外国人技能実習機構〔OTIT〕への申請)

⊂まとめ⊃
1.計画認定在留資格変更の2つの手続きが必要
2.検定合格が必須
3.3号は「優良認定」が不可欠

(3) 技能実習から「特定技能1号」への移行

 技能実習から直接「特定技能2号」に移行することは原則できません。まずは特定技能1号への移行が一般的です。【特定技能1号移行の要件】
技能実習2号または3号を良好に修了
特定技能1号の12分野に一致(例:建設、素形材、産業機械製造、飲食料品製造、介護、宿泊、外食など)
技能実習職種と特定技能分野が一致していること→一致すれば技能試験・日本語試験が免除。
 ※職種によっては移行不可の場合もあります。必ず職種マッチングを確認しましょう。

(4) いきなり「特定技能2号」で働くことはできるの?

 原則として、いきなり「特定技能2号」での就労はできません。理論上は可能ですが、以下の理由で現実的ではありません。
【理由】
 ・技能評価試験の実施回数が非常に少ない
 ・試験の難易度が高い
 ・実務経験がないと合格困難
【特定技能2号の要件】
 ・技能評価試験合格
 ・現在は「建設」「造船・舶用工業」の2分野のみ

そのため、一般的には「特定技能1号」で経験を積み、2号へステップアップするルートが基本です。

(5) 技能実習から「育成就労制度」へ ~新たな人材育成への取組み~

 技能実習制度は、本来「国際貢献」と「人材育成」を目的に導入されましたが、実態としては長時間労働や失踪など、多くの課題を抱えています。こうした課題を踏まえ、日本政府は新たに「育成就労制度」を導入することを決定しました。
【育成就労制度の概要】
 ・人材育成と労働力確保を両立させる新制度
 ・特定技能1号取得への道筋を提供
 ・2027年施行予定
 ・3年間の移行期間を設定予定

 これは、技能実習制度からの大きな転換点となり、今後の動向に注目が集まっています。

 当事務所では、技能実習や特定技能の計画書作成、申請手続き、支援体制の整備までトータルでサポートしております。企業様・外国人の皆様に寄り添ったきめ細やかな支援を心がけておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

家系図作成・入管業務|行政書士たかはし法務事務所