2025年から導入が進む「育成就労制度」では、従来の技能実習制度と異なり、一定の条件を満たせば外国人労働者が転籍(職場の変更)できる仕組みが検討されています。これは制度の大きな転換点であり、企業や支援機関にとってはメリットと同時に不安も伴います。
(1)転籍が可能になることで懸念される点
- 地方から都市部への人材流出の可能性
郡山市のような地方都市では、都市部との待遇や生活環境の差が転籍希望の増加につながる恐れがあります。企業が初期費用や教育コストをかけても、定着せずに人材が流出するリスクが現実味を帯びています。 - 雇用の安定性が揺らぐ
技能実習制度では原則3年間の固定契約が基本でしたが、育成就労では本人の希望による転籍が認められる方向です。これにより、企業側は「いつ辞めるか分からない」という不安を抱えやすくなります。 - 支援体制の見直しが必要になる
転籍が発生すると、登録支援機関や監理団体も支援対象が変わるため、契約内容や支援体制の再構築が求められます。特に中小企業では、手続きやコストの負担が増えることが懸念されています。
(2)なぜ国は転籍を認める方向なのか(制度設計の背景)
- 人権と労働環境の改善
従来の制度では、実習先に縛られる構造が人権侵害や労働搾取の温床とされることもありました。新制度では、本人の意思を尊重し、職場選択の自由を広げることで、制度の透明性と国際的な信頼性を高める狙いがあります。 - 定着支援の質向上
転籍が可能になることで、企業は待遇や職場環境の改善に取り組むインセンティブが生まれます。結果として、外国人材の満足度や定着率が向上し、長期的な雇用安定につながると期待されています。 - 国際競争力の維持
近年、東南アジア諸国では賃金水準が上昇し、日本より高待遇の国も増えています。外国人材の確保には、柔軟で魅力的な制度設計が不可欠であり、転籍容認はその一環と位置づけられています。
(3)実務での対応ポイント
- 転籍には厳格な条件が設けられる予定です(例:1年以上の契約期間、技能検定や日本語能力試験の合格など)。
- 転籍元企業が負担した初期費用については、転籍先が一定の負担をする仕組みも検討されています。
- 待遇改善や昇給制度の整備が、転籍制限の根拠として認められる可能性もあります。
郡山市のような地域では、「人材が流出するのでは」という不安と、「制度が変わる前に準備したい」という前向きな姿勢が混在しています。企業としては、制度の趣旨を理解し、待遇や支援体制を整えることで、むしろ選ばれる職場になるチャンスにもなります。