令和6年、全国の労働基準監督署等は、特定技能外国人を雇用する事業場のうち、労働基準関係法令違反の疑いがある5,750事業場に対して監督指導を実施しました。
その結果、約76%にあたる4,395事業場で法令違反が確認されました。ちなみに日本国内で働く特定技能外国人は約28万人にのぼります。
違反の多い業種としては、「建設業」は違反率80%以上を超えており、「食品製造業」「農業・畜産業」「工業製品製造業」「社会福祉施設」すべての業種で高い違反率となっています。
主な違反項目は以下の通りです(複数回答)
📌機械等の安全基準未遵守(24%)
📌割増賃金の未払い・健康診断結果に関する医師の意見聴取未実施(17%)
📌労働時間の不適正管理(15%)
📌年次有給休暇の不備(12%)
📌就業規則の未整備(11%)
📌賃金の未払い・労働条件の不明示(10%)
となっている。
具体的な外国人労働者からの申告の事例を紹介します。
✅【事例1】食品製造業での労災と安全対策
包装機械の操作中に特定技能外国人が指を切断する事故が発生。安全装置の整備不足と教育の未実施が原因
とされ、機械の使用停止命令と是正勧告が出された。
➡企業は安全マニュアルの改善と教育体制の整備を実施。
✅【事例2】建設業での賃金控除と割増賃金の不備
家賃・光熱費・工具代を労使協定なしに控除していたほか、特別手当を割増賃金の算定基礎に含めていなかっ
た。➡企業は協定の締結と不足分の支払いを実施。
✅【事例3】社会福祉施設での契約違反
中途退職時にビザ取得費用を賃金から控除する契約内容が問題視され、違約金条項の削除と母国語併記の契
約書への変更が行われた。
送検された重大事案として、令和6年には、悪質な法令違反により7件が送検された。
✅【事例】
金属製品製造工場で安全装置を無効化した状態でプレス機械を使用させた結果、労働災害が発生。法人および取締役が安全措置を怠った疑いで送検された。
行政書士として考えること
特定技能外国人を雇用する事業場の違反率が高い現状は、制度の信頼性を揺るがす深刻な課題です。
契約書の母国語併記、安全教育の徹底、適正な賃金支払は、最低限の法令遵守です。
行政書士は、雇用契約や労使協定の整備を通じて、企業の法令順守を支援できます。
また、外国人が安心して相談できる体制づくりにも積極的に関与すべきです。
制度の趣旨を理解し、現場の声に寄り添う姿勢が求められています。
外国人労働者の権利保護は、日本社会の国際的信頼にも直結します。
行政書士として、透明性と公平性のある雇用環境づくりに貢献していきたいと思います。