厚生労働省は2025年9月26日、技能実習生を受け入れている事業場に対する監督指導の結果を発表しました。全国の労働基準監督署などで実施された調査では、労働基準関係法令違反が疑われる11,355事業場のうち、約73%にあたる8,310事業場で実際に違反が認められました。
特に違反率が高かった業種は、「建設業(建築・土木工事)」、「食料品製造業」、「農業・畜産業」です。日本で働く技能実習生は約45万人おり、主な違反内容は以下の通りです。
📌使用する機械や設備の安全基準違反(25%)
📌割増賃金の未払い(15.6%)
📌健康診断結果に対する医師の意見聴取の不備(14.9%)
📌労働時間や衛生基準、年次有給休暇の管理不備(各12%前後)
📌就業規則や賃金台帳の不備、労働条件の明示不足など
具体的な事例としては、以下のようなケースが報告されています。
✅事例1:最低賃金・割増賃金・有給休暇の未適正管理(建設業)
技能実習生5名に最低賃金を下回る賃金が支払われ、時間外労働に対する割増賃金も未払いでした。また、有給休暇の取得管理も不十分でした。是正のため、過去の未払い分を含めて支払いを行い、今後は面談を通じて有給休暇の取得状況を確認する運用を開始しました。
✅事例2:機械による労働災害(食料品製造業)
食肉加工機械で作業中に技能実習生が手を負傷する事故が発生。原因は機械が稼働したまま作業を行ったことでした。労働基準監督署の指導により、機械操作の手順書を母国語で作成し、視覚的注意喚起も行うなど、安全教育を徹底しています。
✅事例3:休憩時間中の労働と賃金未払い(ホテル業)
休憩時間にも労働させられていた技能実習生の賃金が一部未払いとなっていました。また、早退に伴う賃金控除が過剰でした。是正として未払い分と過剰控除分を精算しました。
重大・悪質な違反に関しては送検事例もありました。例えば、高所作業中の墜落防止措置が不十分で死亡災害が発生したケースや、36協定を締結せず違法な時間外労働を行わせたケースなどです。
行政書士としてのアドバイス
技能実習生や特定技能外国人を受け入れる事業所では、労働基準法や安全衛生法の遵守が不可欠です。以下の点に注意しましょう。
1.労働時間・賃金管理の徹底
最低賃金・割増賃金の支払い、休憩・有給休暇の取得管理を確実に行うこと。タイムカードや賃金台帳は正確に作成しましょう。
2.安全衛生教育の充実
外国人労働者が理解できる母国語の作業手順書や視覚的表示を活用し、機械操作や作業工程の安全教育を徹底します。
3.労働条件の明示と就業規則の整備
雇用契約書や就業規則を整備し、外国人労働者に理解してもらえる形で説明します。
4.問題発生時の迅速対応
労働者から申告や相談があった場合は、迅速に調査・是正し、再発防止策を講じることが重要です。
行政書士としては、これらの手続きを整備・指導したり、契約書類や就業規則のチェック、労働基準法遵守のアドバイスを提供することで、事業主が安心して外国人労働者を受け入れられる環境づくりを支援できます。