日本で介護福祉士として働くための在留資格のひとつに、「介護」があります。これは、国家資格である介護福祉士を取得した外国人が、介護施設や事業所で就労するための在留資格です。
(1) 資格取得の流れ(例)
<日本で資格を取得する場合>
1.日本の介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業
2.国家試験「介護福祉士」に合格
3.「介護」の在留資格を申請・取得
4.介護施設などで就労開始
<外国人が対象となる主な例>
・留学生として日本の養成校で学び、資格を取得した場合
・EPA(経済連携協定)により来日し、介護福祉士資格を取得した場合
※注意:「技能実習」から「介護」への直接移行はできません。元技能実習生が「介護」の在留資格を取得することは、原則として認められていません。
(2) 「介護」「特定技能」「技能実習」の比較
在留資格「介護」「特定技能1号(介護)」「技能実習(介護)」の違いは以下のようになります。
在留資格 | 国家資格 | 就労内容 | 家族帯同 | 備考 |
介護 | 必要(介護福祉士) | 限定(介護) | 可 | 永住許可の可能性あり |
特定技能1号(介護) | 不要 | 限定(介護) | 原則不可 | 在留期間最長5年、永住不可 |
技能実習(介護) | 不要 | 限定(介護) | 不可 | 原則として実習終了後は帰国義務あり |
(3) EPA(経済連携協定)とは?
日本がインドネシア・フィリピン・ベトナムなどと締結している経済連携協定(EPA)に基づき、将来的に介護福祉士として就労することを目的とした外国人候補者を受け入れる制度です。
<EPAルートの主な流れ>
1.現地選抜・準備研修
各国で日本語や介護の基礎知識を学び、候補者として選ばれます。
2.来日(在留資格:特定活動)
最長4年間の「特定活動」在留資格で日本に入国します。
3.介護施設で実務を行いながら学習
施設で働きつつ、国家試験に向けた勉強(日本語指導含む)を行います。
4.国家試験受験(年1回)
在留期間中に合格すれば、「介護」への在留資格変更が可能になります。
➡合格後は、長期就労や家族帯同が可能となり、永住申請の要件も満たしやすくなります。
¶注意¶
国家試験に不合格だった場合は在留期間の延長はできません。最長4年で合格できなかった場合は、原則として帰国が求められます(例外は基本的に認められません)。
(4) 専門学校で学ぶ外国人留学生との違い
EPAルートと、日本の専門学校で学ぶ外国人留学生ルートは、制度としてまったく異なります。
比較項目 | EPAルート | 留学生ルート |
出身国の制限 | あり(インドネシア・フィリピン・ベトナム) | なし(全世界対象) |
入国前の訓練 | 自国で日本語や介護研修を受講 | 日本に留学して養成施設で学習 |
初期の在留資格 | 「特定活動(EPA候補者)」 | 「留学」 |
資格取得の方法 | 実務と講習を受けながら国家試験受験 | 養成施設卒業 → 国家試験(または試験免除) |
国家試験合格後 | 「介護」に在留資格変更可能 | 同様に「介護」に変更可能 |
国家試験に不合格時 | 最長4年で不合格なら帰国 | 在留期限内に別の進路を検討可能(例:特定技能) |
⊂まとめ⊃
在留資格「介護」は、介護福祉士という国家資格を取得した外国人に限られて付与されるものです。特定技能や技能実習と比べて安定した在留・就労が可能であり、家族の帯同や将来的な永住も視野に入ります。
ただし、取得ルート(EPA・留学生など)によって支援体制や条件が大きく異なりますので、それぞれの制度を正しく理解し、計画的に準備を進めることが重要です。